精度要求の激しいパーツに最適
当シリーズは、以下の3つの特色がある、精密金型部品用途に必要不可欠な材料です。
- 鍛造材を使用
- ソルトバス(塩浴熱処理)焼入れ
- -196℃の超サブゼロ処理
鍛造材を使用
多面鋳造などにより、圧延工程などによるバンド状偏析を極力低下させています。
また、鍛造圧化による組織の微細化・高密度化が図れます。
ソルトバス(塩浴熱処理)焼入れ
中性塩を融解した液体中で熱処理品を加熱する方法。
大きい母材など内部に熱勾配(中心が冷たく外側が熱い)がないので、硬さ、性質のバラツキ、変形を抑えます。
-196℃の超サブゼロ処理
焼入れ後に0℃以下まで冷却し、オーステナイトの分解を促進します。
ドライアイス(-80℃)、炭酸ガス(-130℃)、液体窒素(-196℃)などの深冷処理方法があります。
もともと異方性の少ない素材に、硬さを安定させ変形を抑える熱処理を行い、残留オーステナイト、残留応力をほぼゼロにした材料です。
- 耐摩耗性の向上
- 靭性の向上
- 寸法の安定性
当社では、-Sシリーズの超サブゼロ処理は-196℃の液体窒素の使用を限定しており、普通サブゼロは-110℃~-160℃にて対応しております。
-196℃の(クライオ処理)は、さらなるオーステナイト分解効果が高くなります。
工具名 | 耐摩耗性の向上率(%) |
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熱間パンチ | 600 |
パンチ | 500 |
スリッターナイフ | 400 |
サイドトリマー | 300 |
ロータリーシャーナイフ | 600 |
チョッパーナイフ | 250 |
ペーパースリッターナイフ | 600 |
スタンピングダイス | 400 |
切削工具 | 400 |
ブローチ | 300 |
木材用ハンドソー | 250 |
スリッティングソー | 33 |
高速度鋼タップ | 300 |
溶接用銅電極 | 200 |
サブゼロ処理と超サブゼロ処理の違い
普通サブゼロ処理と超サブゼロ処理の学術的区別は判然としませんが、以下と呼ばれています。
- -100℃までの処理:普通サブゼロ処理
- -130℃までの処理:超サブゼロ処理
- 大和久重雄先生著「金型の熱処理ノート」より抜粋(日刊工業新聞社)
安定化処理
経年変化対応として施す、中温度域での焼戻し処理です。
焼戻し後、250℃~450℃程度の中温焼戻しを追加実施して、残留オーステナイトを安定化させる処理です。
-S(スーパーサブゼロ)材と一般材の比較
-S(スーパーサブゼロ)材と一般材の各種データをMASTで比較しました。
対象材 | HAP40 60×150×150 65HRC
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項目 | A:-S材 | B:一般材 |
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硬さ (HRC) |
熱処理性の悪いハイスの中心部fの比較がポイント。 |
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残留オーステナイト量測定(%) |
-S材は残留オーステナイトも4%以内で均一になっています。 |
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組織観察 f部 (電子顕微鏡) |
炭化物が微細化され均一になっています。 鍛造+ソルトバス+超サブゼロの合わせ技効果! |
- 残留オーステナイトと組織写真は、工業試験センターでの測定データです。
- 硬さはJIS認定の熱処理メーカーでの測定データです。
熱処理の違いによる比較
SLD(SKD11)の熱処理の違い(低温戻し・サブゼロ高温戻し)による各種データをMASTで比較しました。
対象材 | SLD(SKD11) 40×100×100
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項目 | C:低温戻し材 | B:サブゼロ、高温戻し材 |
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硬さ (HRC) |
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残留オーステナイト量測定(%) |
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組織観察 f部 (電子顕微鏡) |
HAP材に比べると、炭化物が大きく偏在しています。(上記「-S(スーパーサブゼロ)材と一般材の比較)」を参照 |
- 残留オーステナイトと組織写真は、工業試験センターでの測定データです。
- 硬さはJIS認定の熱処理メーカーでの測定データです。